とが考えられるもしもIOEBがリッジの中から発見されたならば、海氷が衝突することにより破損したものとも考えられるが、IOEBの周囲約80mはリッジはなく平坦であったことから、海氷の衝突はなかったものと思われる。
5. IOEBの回収作業
回収作業は4月20日と21日の2日間で行われた。先ずIOEBを中心として5mの四方の積雪を取り除く作業を実施し、海氷表面をあらわにした。ここに吊り上げ荷重3トンのガントリークレーンを設置し、クレーンから30m離れた所にウインチを設置した。クレーンおよびウインチの足は、海氷内約60cmの深さまでに凍り固められたアンカーボルトに固定された。
21日の午前10時より温水オーガー(直径127cm)による海氷のくり抜き作業を開始した。温水オーガーの掘削性能は50cm/hrであったが、開始当初周囲に設置されていた海氷観測センサーのケーブルが邪魔となり、これを切断しながらの作業となったため、頂上浮体をフリーの状態にするのに必要な深さ40cmをくり抜くまでに1時間30分を要した。午後からは順調に作業が進み、くり抜きが終了したのは午後3時30分であった。この後、海中索の回りに残った海氷を少しずつを引き上げ、ピッケルを用いて細かく砕きながら取り除いた。
IOEBの同収は、頂上浮体より順に行われ、音響式流向流速計、電気伝導度・水温計、セディメントトラップ、電磁式流向流速計などが続いて回収され、最下端に重ドされているウエイトが回収されたのは午後7時40分であった。
4年を経過したものの海洋観測センサーの外見は、付
写真−5 ガントリークレーン
着生物や腐食した個所も見受けられず、非常に良好な状態であった。すぐに回収されたセンサーの内部メモリーから、データの取り出しが実施された。その結果、残念なことに、電気伝導度・水温計、電磁式流向流速計に記録されていたデータは解析に使用できない内容のものであった。またセディメントトラップはカップが回転しておらずサンプルは取得されていなかったことなどが分かった。理由は、これらのセンサーのソフトウエアがIOEBの内部通信系のソフトウエアに完全に適合していなかったことによるものであった。この問題は、その後のIOEB2号機の開発建造の際に解消されている5)。
なお音響式流向流速計は正常に作動しており、データが保存されていた。これまでに人工衛星を経由して得られたデータを剛いて解析が進められており、ボーフォート海の中層中規模渦を確認するなどの成果をもたらしている。今後はメモリーに保存されていたより密な観測データをもとに解析することができるため、中属中規模渦の海中における立体的な構造を解明できるなどの成果が期待されている。
6. IOEBの再設置作業
4月21日の回収終了後から回収キャンプの撤収が始められ、ヘリコプター輸送によりすべての機材がべースキャンプに戻ったのは22日の午後であった。23日からは、回収されたIOEBの観測センサーの内、新品と交換する物以外については現場で整備を行う必要があるため、
写真−6 温水オーガーによる穴開け作業
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